小柄の小松です。今回はあらゆるシーンで使えるロングコートについて。
2020年11月13日(金)に発売されたユニクロとジルサンダー氏のコラボ「ユニクロ+J」
アパレル業界を激震させたといわれる2009年のコレクションから11年。ユニクロUやJWアンダーソンコラボを上回る勢いで売れていますが、そのなかで最もシンプルといっていいのがコート類。
2種類のうち1着だけ購入しましたが、全くの隙のない完璧なつくりに度肝を抜かれました。その特徴をレビューしたいと思います。
ユニクロ+Jのウールブレンドチェスターコートをレビュー【オンオフ使える】
こちらが今回紹介するユニクロ+Jのウールブレンドチェスターコート
身長162cmの小松はブラックのXSサイズを購入しました。
冠婚葬祭でも使える究極のシンプル
今回展開されてるチェスターコートは2型でしたが、こちらは着丈の短い方のシンプルなコート。
一見普通のチェスターコートに見えますが、買って着てみた結果、ジルサンダー氏の数々のこだわりを感じることができました。
まずパッと見のデザインですが、ポケットが左胸と腰の2つに付いています。
ここ数年ほどユニクロのチェスターコートを見てきましたが、実はこの形のコートは非常にレア。
スーツのジャケットをそのままコートにしたようなデザインですが、チェスターコートのなかでもフォーマルな部類です。
腰のポケットは縦向きになっていて、上からフタをかぶせる”フラップポケット”。
スーツジャケットと同じと書きましたが、それゆえにビジネスや冠婚葬祭向きのカッチリした雰囲気があるデザインです。
https://www.uniqlo.com/jp/ja/products/E429297-000/00?colorDisplayCode=36
ちなみにユニクロが通常ラインで出してるカシミヤチェスターコートは、正面から見えにくいサイドポケット式になってます。
これは手を入れやすくして防寒性を高める”ハンドウォーム”を目的としたつくり。
どちらかというと機能性を重視したデザインです。
胸ポケットもスーツと同じ。
スマホが入りきらないほどコンパクトですが、こちらも通常ラインには長いこと付いていませんでした。
一般的な洋服は目立つデザインが少ないとラフになるものですが、チェスターコートに関してはフラップポケット×胸ポケットのほうが大人びた要素が強くなります。
襟(ラペル)は大きめで、切れ目の”ゴージライン”も高い位置についています。
ユニクロUのコートはこのゴージラインを下げてあえてラフな仕様にしていますが、+Jのほうが冠婚葬祭用に適したつくり。最近よく聞く言葉でいうと”クラシック”なコートということです。
繰り返しになりますが、総合的に見るとここ数年のユニクロでは見られなかったレアなデザインといえるんですね。
それと裾のスリット(センターベント)には糸が付いています。
これは「仕付け糸」と呼ばれるもので、形崩れ防止のために付いてますが、実際に着るときは切るのが常識のようです。
胸ポケットにも黒い仕付け糸が付いていますが、こちらは切る派・残す派に分かれるようです。
実際ポケット自体が小さいので収納目的で使うことはほぼありません。外から見えない糸なので恥ずかしいということもない。
ただ着こなしという点で考えると、ポケットチーフ・カードケースなどを指してアクセントにできるので、特にこだわりがなければ切ったほうがいいでしょう。
オーダーメイドのようなフィット感の秘密とは?
デザインに惹かれて買ったのが1番の理由ですが、実際に着てみて思ったのは、いままでのユニクロコートで感じたことのない自然なフィット感。
身幅は少しだけゆとりがありますが、肩まわりがシュッと細いつくりなので縦のラインが綺麗に出ます。
肩パッドが入っているのもその理由ですが、パッド自体が薄めなので肩のラインは目立ちにくい。
パッド付きのコートは肩が浮き上がって存在感が出てしまうこともあります。あえてデザインとして目立つようつくるブランドもありますが、それだと着こなしが難しいことも多い。
+Jはカッチリした印象を出しつつ自然な印象があります。より多くの人が抵抗なく着られるよう工夫してるといえるでしょう。
ところでこのコートは機能性についてもしっかり考え込まれています。
コートの裏には左右に隠しポケットが付いていますが、こちらはiPhoneX・XSなどが問題なく入る収納力。
より高い位置にポケットを付けることで荷物の出し入れがしやすいよう工夫されているんですね。
さらにおもしろいのが、ポケットの収納部分が別布になっていること。腰のフラップポケットも同じ仕様です。
ちょっと不思議な形に見えますが、これはポケットがコートのボディに干渉しないようにするため。
ポケットに荷物を入れるとその部分が膨れて見えやすいもの。そこでポケットを別布にすることで、荷物を入れてもシルエットが崩れにくいよう工夫しているのでしょう。
実際に着てみるとこんな感じ。
最近のコートは着丈か身幅をオーバーサイズにしたものが多いですが、そのトレンドに寄せつつ、適度にシャープな印象が出るようにしてるのがこのコート。
この絶妙なシルエットは間違いなくジルサンダー氏のこだわりが反映されていると思います。
軽くてほどよい厚みの上質な生地
また、素材に関してもクオリティの高さを感じることができました。
表地はウールとナイロンが使われていますが、薄すぎず厚すぎない生地でハリがあり、ツルっと滑らかなので上品な大人っぽさも感じられる。
長い期間着れるということもあって、最近のコートは生地を薄くしたほうが売れるらしいですが、安っぽさの出ないギリギリの範囲を目指した生地にしているのだと思います。
中央のボタンはおそらくプラスチックですが、水牛ボタンのような”ヒビ割れ”を再現していて高級感があります。
しかもよく見るとブラウンがかった色味。ボタンが適度に主張してくれるので、同じ無地コートより地味な印象が出ないつくりです。
ちなみに袖先にはボタンが付いていません。けれどこれはコスト削減とは別の理由だと思います。
最初に書いたようにこのコートなかなりフォーマルなデザインですが、おそらく袖のボタンをなくすことで、ほんの少しだけラフな印象が出るようにしたのでしょう。
ユニクロUはポケットやサイズ感などで比較的大胆にラフな要素を取り入れる傾向がありますが、+Jはそれ以上に細かく、けれど確実にデザインの足し算・引き算を考えているのかもしれません。
「サンダー氏は常に限界を超えてより良いものを作ろうと追求している。だからこそ良い商品ができるんだ」
これはユニクロの役員の方がインタビューで語っていたことですが、着てみたことでそれを肌で実感しました。
「着心地が良い」という言葉が安っぽく聞こえるレベル。手にとってもらえば、決して大げさな表現じゃないことがわかるはずです。
・冠婚葬祭でも使える究極のシンプル
・オーダーメイドのようなフィット感
・軽くてほどよい厚みの上質な生地
シンプルな服をとことん追記するジルサンダー氏。彼女のミニマリズムが詰まった究極の1着といえるでしょう。ユニクロ+J ウールブレンドチェスターコート