小柄の小松です。今回は2020年秋冬ユニクロUの傑作アウターについて。
海外コレクションの影響もあり、最近はいろんなブランドがジャケットを展開していますが、ユニクロUでもそのトレンドを踏まえてテーラードジャケットを取り扱ってます。
2020年秋冬だとテーラードジャケットは2種類ですが、そのうちの1つは明らかに他のアウターよりクオリティの高いアイテム。
一見シンプルですが、これまでのテーラードジャケットとは違うアプローチで作られてることがわかりました。
2020年秋冬ユニクロUのジャージーテーラードジャケットをレビュー
こちらが今回紹介するユニクロUのジャージーテーラードジャケット
身長162cmの小松はダークグレーのXSサイズを購入しました。
ボタンを閉じて着ることを想定したデザイン
テーラードジャケットはここ数年のユニクロUで定番化していますが、今回のジャケットはこれまでと大きく違うところが1つあります。
それは「ボタンを閉じて着ることを想定したデザイン」であること。
普通のテーラードジャケットはボタンを開けて着ることをベースにしてるので、真逆なコンセプトで作られたジャケットということになるのです。
その秘密はまずボタンまわりの形にあります。
上のような通常のジャケットはボタンから裾にかけてカーブした形。
このジャケットはその曲線を抑え、裾にかけて真っ直ぐに落ちたボックス型。
最初のジャケットと比べると裾まわりが重なる面積が多く、閉じるとコンパクトにまとまってるのがわかるかと思います。
身幅もやや広くとることで、ボタンを閉じたときにストンと落ちるような形。腰まわりが比較的スッキリ見えるよう工夫されているんですね。
実際に着た状態がこちら。
もう少し痩せてればわかりやすかったんですが、第二ボタンから裾までが直線的になってることで横の広がりが抑えられているんですね。
上下同素材のアイテムを使った着こなしは”セットアップ”と呼ばれますが、基本的にアウターのボタンを開けた着こなしが多め。
洋服のトレンドは常に変化していますが、普通のテーラードジャケットが浸透してきたことで、別の着こなしを考える必要が出てきています。
そこでボタンを閉じてもスッキリ見える形にすれば、デザインを大幅に変えなくてもセットアップの着こなしに幅を持たせることができる。
実はユニクロUのもう1つのテーラードジャケットも、春夏と比べるとボタン・裾回りの形が直線型にアップデートされています。
海外コレクションでもジャケットのボタンを閉じた着こなしが増えているので、ユニクロもそれに沿ってアウターのデザインを変えているんですね。
ユニクロUだけでなく、通常ラインのアウターもいくつか検索してみてください。コートやデニムジャケットなどもボタンを閉じた着こなしが多いことに気付くと思います。
ところで今回のジャケット、他にも普通のジャケットと違う点がいくつかあります。まずは襟(ラペル)が低い位置に付いてること。
襟端の切れ目のことを”ゴージライン”と呼びますが、このゴージラインを低い位置にすることでジャケットのキメすぎな印象を和らげてくれてます。
これはここ数年のユニクロUジャケットで定番の形。この特徴のおかげで、ボタンを閉じた着こなしでも適度にラフな印象が出てくれるんですね。
次に胸ポケットがなくなってること。これはもう1つのテーラードジャケットとは違う仕様です。
一般的なスーツジャケットには胸ポケットが付いていますが、これがないことでスーツ要素が削られ、ラフな街着として着れるように調整されています。
袖先にボタンがないのも同じ理屈です。
もう1つのテーラードジャケットもボタン無し。これのおかげで袖まわりがスッキリして見えます。
ポケットはボディの上から縫い付けた”パッチポケット”になってます。
スーツ用ジャケットはポケットの縫い目が見えず、上にフタが付いているフラップポケットが一般的。
スーツは基本的に目立つデザインを避ける傾向があります。そこでパッチポケットという目立つデザインを入れることで、ジャケットにラフな印象を足しているんですね。
それと細かいですがポケット上のライン(ダーツ)も1本削られています。もう1つのテーラードジャケットとは違うつくりです。
このダーツも一般的なスーツジャケットにあるデザイン。あえてなくすことでさらに街着として着れるよう工夫しているんですね。
ボタンを閉じた着こなしをベースとして、一般的なスーツのデザインを限界まで削ぎ落としたジャケット。
ユニクロUのジャケットはこのデザインの足し引きがいつも絶妙なんですが、今回もかなり計算されたデザインであることがわかります。
軽くて暖かい高級感のある素材
ところでこのジャケット、いつもと違うのはデザインだけではありません。
今回のジャケットはウールと化学繊維をうまく混ぜることで、これまで以上に高級感のある風合いにアップデートされているんです。
これまでのジャケットは化学繊維を使ってウールに見えるよう工夫されてましたが、このジャケットはウールが入っているのでより上品で大人びた要素が増しています。
毛羽立ちがあって秋冬らしさのあるジャケットですが、羽織ってみるとビックリするほど着心地は軽やか。
その秘密は素材の配合にあると思われます。
オモテの生地に使われてるのはウール・ポリエステル・ナイロンの3種類。
ポリエステルは軽くてシワになりにくい。ナイロンはハリがあって耐久性が高いなどの傾向があります。
生地屋さんではないので細かいところまではわかりませんが、ウールの質感を残しつつ、化学繊維をうまく混ぜることで軽やかな着心地になるよう工夫したのだと思います。
かなり風合いが独特なので、基本的には同素材のスラックスとセットで着るのがおすすめ。
ジャケット単体で着る方法も模索中ですが、そのときはジャケットの素材に負けないようなパンツ・靴を選ぶ必要があるかと思います。
カラー展開はグレー・ベージュの2種類。
着こなしを工夫しないと”おじさんぽく”見える可能性もありますが、パッと羽織ってみるだけでクオリティの高さを実感できると思います。
なぜオーバーサイズなのにコンパクトに見えるか?
このジャケットは通常のテーラードジャケットより着丈が長いので、一見するとオーバーサイズに見えます。
けれど実際に羽織ってみると、思った以上にスリムな形であることがわかりました。
1番の理由は袖丈の長さ。着丈は長めですが、袖丈を少し短くすることでオーバーサイズな印象を減らしています。
僕は腕が短めですが、羽織ってみると親指の付け根より少し上にくるくらい。
コンフォートジャケットなどもそうですが、実は今年のユニクロは袖丈が短いジャケットが多め。
着丈も袖も長いとダラしなく見えやすいですが、部分的に短くすることでほどよくゆったり見えるよう工夫しているんですね。
それと肩まわりですが、パッドが入っていないので身体に沿った形になってます。
肩パッドが入っているとキチッとしたスーツの要素が強くなるもの。
グレー・ベージュという少しおじさんぽさのあるカラー展開ですが、肩パッドがないことでその印象を削っているのだと思います。
サイズ選びのポイントはいろいろありますが、基本的には「ボタンを閉じて着たときのバランス」を目安にするのがいいと思います。
肩幅はジャストサイズ、袖丈は短め、そして身幅はボタンが留められる程度にするのが理想。
着丈が長すぎるとダラしなくなるので僕はXSサイズにしましたが、身長が高くてMかLで迷うという人は「ボタンを閉じて着れるサイズ」を目安にしてみてください。
・ボタンを閉じて着ることを想定したデザイン
・軽くて暖かい高級感のある素材
・オーバーサイズだけどコンパクト
羽織った瞬間にそのクオリティの高さがわかるジャケット。
着こなしに工夫が必要ですが、他のアウターと比べると頭ひとつ抜き出た傑作といえるでしょう。ユニクロU ジャージーテーラードジャケット